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出発点

 投稿者:田舎の隠居  投稿日:2009年 8月26日(水)11時33分34秒
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  天候不順の中での夏席、雷と土砂降りの雨も、開演の頃には収まって、新しい真打ち二人の出発の会は、久し振りの超満員で、和やかに話し収めてめでたいことでした。

前座の鯉ちゃさん、入門以来日が浅いにしては口が滑らかだと思ったら、落研以来研鑽を積んでいたとのこと。助走十分なので、どう言う具合に成長するか楽しみですね。

鯉之助さんは来年の真打ちが既に予定されているとのこと。物腰も話しも落ち着いていて、本格派の王道を歩いているらしい。大いに期待します。

鯉太さんの語り口は珍しい。噺家言葉を使わずに、元気のいい若者の日常会話で古典落語を披露してくれました。これは勇気のある挑戦ですね。途方もなく難しいけれど、挑戦し甲斐のある大きな課題だと思います。根気よく磨いていけば前人未踏の素晴らしい作品に行き着くだろうと思います。楽しみです。

鯉枝さんの新作落語を聞きながら、懐かしいものを感じました。何故だろう。

不自然な生活を営んでいる東京を、田舎の人間の新鮮な目で見るというのは、歌謡曲などでも最近余り見掛けなくなった状況設定でしょうが、これは明治以来の日本社会で、基本的な状況ではないでしょうか。豪華で最新式の都会が、実は軽薄で中身がないと言うことを、素朴な農村の視線によって容赦なく暴露して笑い飛ばす。これは江戸落語では表現できないことかもしれない。でも考えたら、江戸落語は江戸という環境の中での建て前と本音の矛盾を笑っているのだから、落語としてはどちらも同じように、世間の建て前や権威を笑う世界です。鯉枝さんの新作は、落語の本道を行っていると思います。

懐かしいと思ったのは、多分、鯉枝さんを聞きながら、松鶴家千代若さんを思い出したからではないかと思います。奥さんの千代菊さんと一緒に舞台に出て来て、絶妙のタイミングで「もう帰ろうよ」と遣っていた人。鯉枝さんが上京させた青年も、何度か「もう帰る」と言いましたね。そうです。東京には、真面目な人間を追い返す性質があります。青年が最後まで東京に妥協せずに、「こんな所にいたくない」と思い続けることを期待します。


鯉昇さんは、こんな具合に我が道を行く若手を育てているということを発見して、さすがだと思いました。真打ち昇進はスタートだという師匠らしい言葉にも共感しました。

雷鳴も 真打ち披露の 賑わいに
 
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